記事024     足助断層と花崗岩

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先日,酒呑(しゃちのみ)ジュリンナ遺跡を訪れる際に,地質図を眺めてみました。この地域は領家花崗岩類の伊奈川花崗岩が分布しており,その特徴から塊状岩相かいじょうがんそう(図1の濃赤色部)と片麻状斑状岩相へんまじょうはんじょうがんそう(図1の淡赤色部)に分けられています。遺跡(Sy)は塊状岩相の分布地にありますが,この岩相の分布地域が細長くなっているのがすぐ目につきます(図1の右下図)。この原因はすぐ南側を走る足助あすけ断層などの断層の影響(シンテクトニック花崗岩)だと考えられています。足助断層は豊田市の松平インターチェンジ付近から,北東-南西方向に延び香嵐渓の付近を通っていると考えられていますが,その位置は巴川ともえがわ流域に沿って位置するという考えや,酒呑ジュリンナ遺跡のある谷を通るなど研究者によって少し異なっています。ただ,遺跡の有る谷は直線的に北東方向にのびており(図2),断層の影響によってつくられた谷ではと考えています。古い遺跡があることからひょっとしたら,巴川が昔は流れていたのかなあと夢想しています。
巴川沿いは足助剪断帯せんだんたいとよばれ,断層によって破砕されたと考えられる岩石が分布しています。香嵐渓の巴橋の下付近には花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイトと呼ばれる,高温で壊れることなく塑性そせい変形した断層岩が見られます(図3)。地震が発生するときの急激な岩盤のずれによる摩擦熱で岩石が溶け,その液が固まった黒色ガラス質の脈状の岩石のシュードタキライト(図4:「地震の化石」ともいわれます)が豊田市田振町たぶりちょうなどで見られます。足助断層から離れた南側を流れる郡界川ぐんかいがわ沿いに法興寺があります。その境内から駐車場に沿って花崗岩の露頭が続きます。粗粒片麻状角閃石黒雲母花崗閃緑岩そりゅうへんまじょうかくせんせきくろうんもかこうせんりょくがん(図5 図6:片麻状斑状岩相)です。粒が粗く,角閃石や黒雲母が一方向に並ぶ花崗岩の仲間の岩石です。

 図1  香嵐渓~ 酒呑ジュリンナ遺跡                                                図2 酒呑ジュリンナ遺跡の地形
   Ko:香嵐渓  Sy: 酒呑ジュリンナ遺跡  Ho: 法興寺
(産総研地質調査総合センターシームレス地質図に加筆) 

図3 香嵐渓のマイロナイト
図4 豊田市田振町のシュードタキライト
図5 豊田市加茂川町 法興寺 粗粒片麻状角閃石黒雲母花崗閃緑岩
図6 豊田市加茂川町法興寺

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