この手(図1)は何の手でしょう? 答えはカンガルーです。
カンガルーは哺乳動物有袋類を代表する動物です。大小多くの種類のカンガルーがいますが,代表的なものは大きな赤カンガルー(Macropus rufsu)とやや小型な灰色カンガルー(Macropus gigantes)です。日本でも飼育されている動物園がありますので“本物“を見られた方も多いでしょう。見出しの写真はカンガルーの左前足で,お土産に買ってきたものです。カンガルーに関してはwebsiteなどでも多く紹介されていますので,2,3点だけ紹介します。
カンガルーは有袋類であり,大きな後肢と小さな前肢があるのが特徴です。Macropusはラテン語で「大きな足」という意味です。オーストラリアの有袋類は南アメリカ起源で,南極を経由してこの大陸にやってきたそうです。カンガルー類ははじめは小さく,中新世のころは森林に生活していましたが,鮮新世以降の寒冷・乾燥化による草地・サバナが出現するにつれて現在のように大きくなったようです。
ここで紹介するのは,カンガルーの繁殖の特徴と,得意な跳躍の話です。
雌のカンガルーは,育児嚢の中にいる離乳前の子供と,育児嚢からは出ているが離乳前の子供,そしてさらにもう一つを胎芽の状態でとどめておくことができます(図2)。育児嚢に子供がいる間は,受精卵が子宮へ着床するのを遅らせる(着床遅延)ことにより発生を遅らせます。有袋類は,胎盤がないためほとんど胎児の状態の子を産みます(未熟児‼)。子は目もみえない状態で母親のおなかの袋に向かって発達した前足や鋭く腕曲した鍵づめを使って登り,袋の中に入ると乳首にしっかりくっつきます。ちなみにカンガルーの育児嚢は上に開いていますが,コアラなどは下に向かって開いています。
もう一つは,大型カンガルーは跳躍が得意で,4本足で走るより後肢で跳ねるほうが少ないエネルギー消費で、高速移動ができるということです。図3に示すように呼吸器系に工夫があるようです。跳躍のバランスをとるために大型種では尾が重くなったといわれます。
また,体温調節のために舌で足をなめ唾液を蒸発させて熱を発散させています(よく見かけます)。運動中は発汗しますがやめるとすぐ発汗はしないそうです。これは乾燥地に住むため体内の発汗を押さえるしくみのようです。
カンガルーと車の衝突事故は時折起きるようです。道路端に死んでいるカンガルーを何度か見ました。近づいて見るとウジ虫が湧きあまり気持ちのいいものではありません。大きなものは体重80kgはありますので,車体の損傷や転倒事故を最小限に抑えるためにバンパーがついている車もあります。このバンパーはルー・バー (Roo Bar) と呼ばれます(こちらではカンガルーを単にルー (Roo) と呼びます)。私が借りていたレンタカーもたいていはついていました(図4)。特に夜間は,車のヘッドライトに向かって飛び込んでくる動物がいます。車は大体100km/hで走っていますので避けることはできません。私も小動物とぶつかったことがあります。
カンガルーは後ろ向きに進めず前進あるのみなので,オーストラリアの国章に使われています。
カンガルーの肉は何回か食べましたが,味音痴の私には印象が残りません。
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