雑記031 塩のいろいろ

雑記

最近,塩に関心を持ち,自分が持っている塩の標本を見てみました。もともとは,鉱物として岩塩には関心があり,機会があれば集めていました。自分で塩の採取はむつかしいので,購入したものや知人から頂いたものが多いです。また,保存上,未開封のものが多いです。

図1 バートイシュルの塩
図2 バートイシュルの塩 成分表

オーストリア バートイシュル Bad Ischl 
ザルツブルグ周辺には,白亜紀やジュラ紀の岩体に接して岩塩ドームが入っています。岩塩ドームとは,地下の岩塩層が周りの岩石や地層よりも軽い(密度が低い)ため,ドーム状に浮き上がってきたものです。先住民のケルト族は3000年前からこれを採掘していたそうです。現在は溶解採鉱しているそうです。成分表にヨードの含有が記されています

図3 ヴィエリチカの塩
図4 ヴィエリチカの塩 立方体の結晶です

ポーランド クラクフ ヴィエリチカ:古くから塩の産地として知られるポーランドのヴィエリチカの地下には,世界最古といわれる「ヴィエリチカ岩塩坑」(世界遺産第一号)があります。ここへの高校生の海外派遣を計画・実施したことがあります。11~13世紀に大々的に開発され,14~16世紀に全盛期を迎えました。内部は美しく,有名な観光地となっています。

図5 “ヒマラヤの塩”

パキスタン 
ヒマラヤ岩塩は、主にパキスタンおよびネパール、チベット、インドの岩塩鉱床から産出される岩塩で,淡紅色、紫色、黒色、黄色などの様々な色があります。主にパキスタンで採掘されているようです。

図6 ヒマラヤの塩
図7 ウユニの岩塩
図8 ウユニの岩塩

ボリビア ウユニ
標高3700mのアンデス高地にある塩原(塩湖がさらに乾燥したもの)で,極めて乾燥した地域ですが,雨季(1~3月)の間は水が溜まって湖のように見えるのが観光の目玉ともいえます。表層の岩塩層は最大約11mの厚さで,表層の下にも岩塩層と湖沼性堆積物が積み重なっているそうです。岩塩層の組成は約99%が塩化ナトリウムです。

図9 マラスの塩

    図10 マラスの位置
ペルー マラスMaras
ペルーのマチュピチュの近く(クスコから車で約1時間半)にインカ以前から続く「マラスの塩田(Salineras de Maras)」があります。標高は3200mあります。非常に塩分濃度の高い泉から塩を採取していたようです。ピンク・ソルト(Sal Rosada de Maras)として有名で,通常は塩田を管理する協同組合を通じて販売されています。

図11 カラハリ砂漠の塩
図12 カラハリ砂漠の塩

南アフリカ カラハリ砂漠
地下水が岩塩鉱と接し,地下湖にできる塩水を採取し作られます。カリウム,マグネシウム,硫黄なども豊富に含まれます。ボツワナ北部にはマカディカディ塩湖と呼ばれる雨季にのみ水がたまる湖があります。かつては現在よりうんと大きな淡水湖があり,それが干上がり残ったものといわれます。

図13 死海の塩
図14 死海の塩

死海
塩分濃度の高いことで有名な死海の水から塩が採取されています。周囲の土壌に含まれていた塩分が雨によって溶け出し,湖で濃縮されて塩湖として形成されたと考えられています. また,ヨルダン川や温泉からも塩分が供給されているとも考えられます。通常の塩よりも多くのマグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれているのが特徴です。死海の水をなめたことがありますが,Mgなどのためか,とてもまずく感じた覚えがあります(水は乾燥で減ってしまいましたが現在も少し残っています)。

図15 カマルグの塩
図16 カマルグの塩 図15の裏面

フランス カマルグCamargue
南フランスのカマルグ地方(地中海沿岸)には約10万haにも及ぶ湿原が広がっており,ここに地中海の海水を引いた塩田で古代ローマから塩づくりが行われていたようです。結晶は純白で,完全な天日塩です。カマルグ地方は,野生のフラミンゴや,カマルグの白馬などで有名で,アルルやアビニョンへ高校生を派遣・引率した際に,カマルグも計画したのですが,時間的に諦めました。

図17 ゲランドの塩
図18 ゲランドの塩

フランス ゲランドGiraud
フランス・ブルターニュ地方のゲランドでは潮の干満を利用して引き入れた海水を塩田内でゆっくりと循環させながら,天日塩をつくっています。モンサンミッシェルで泊まった時に土産として購入したものです。一般的な食塩に比べて,塩化ナトリウムの含有量が少なく,その分マグネシウムやカルシウム,カリウムなどが多く,灰色をしています。

図19 バリ島の塩

バリ島Pulau Bali
雨期のあるインドネシアのバリ島は,天日乾燥とですが,短時間で塩を析出させる必要があるので,一度に干す(かん)(すい)(海水を濃縮した液体)の量は少なく,多くのミネラル分が含まれています。(財)日本食品分析センター調べのデータによると,Na 35.7g,Mg 219mg,Ca 845mg, K 93.3mgとなっています。産地の一つであるクサンバは,「揚げ浜式塩田」で,戦時中に旧日本軍から伝わったのだそうです。これは土産に無料で配られていたものですが,後年,再度 訪れた時は売り物になっていました。

図20 瀬戸のほんじお焼き塩 成分表
図21 瀬戸のほんじお焼き塩
立方体の結晶がきれいです

瀬戸のほんじお焼き塩
我が家で使っている塩です。品質の良し悪しはわかりません。メーカーのHPによれば,瀬戸内海の海水から直接析出させた塩化ナトリウムを焼いて水分を飛ばしたものです。高温で焼くことでにがりの成分が変化し,表面がアルカリ性になり,サラサラとした食感になります。立方体のきれいな結晶が見られます。

図22 長崎五島の塩
図23 長崎五島の塩

五島の塩
我が家で使っている塩です。品質の良し悪しはわかりません。メーカーのHPによれば,五島列島では,1997年から海塩作りが始まり,長崎県崎戸(さきと)(しま)周辺の海水を,平釜で煮詰めたものです。100gあたりの推定値では,Na 30.1g Ca 200mg Mg 350mg K 130mgとなっています。

図24 西尾市吉良の饗庭塩

西尾市吉良
伊勢湾・三河湾岸沿いの製塩は瀬戸内や大阪湾岸から伝わったといわれます。西尾市吉良地区のものは「饗庭塩(あいばじお)」の産地として知られていました。現在は日本の塩田は廃止されています。

図25 饗庭塩 自分でやった塩焼き後10日経ったもの
図26 鹿塩の山塩
図27 鹿塩の山塩

山塩 大鹿村
長野県大鹿村では高濃度の塩水が湧き出し,煮込んで「山塩」として販売されています。マグネシウム(にがり成分)成分が,極めて少なく,とてもさらりとしたお塩です。フィリピン海プレートの岩盤に閉じ込められた海水がプレートの移動と共に移動し,南アルプスの山麓に湧き出ているという考えがあります。鹿塩の地で,塩が採れるということは,かなり古くから知られており,平安時代には馬を生産するための「牧」とよばれる荘園の経営がされていたようです。「鹿塩」も荘園の名前の一つです。塩湯荘で塩水を採水させていただき,塩分計で測ったのですが,データが行方不明です。入浴時に洗顔したとき唇をなめると塩辛かった覚えがあります。ナトリウム-塩化物強塩冷鉱泉(鹿塩の湯 2号泉:塩湯荘)だそうです。

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