“牛川人”の化石

2024年1月24日の新聞に“牛川人”の記事が載ってました(図1)。1957年と1959年に豊橋市牛川町の鉱山から1片ずつ見つかった骨で,当時は「国内最古の人骨」として,日本史の教科書にも掲載されました。東京大学教授であった鈴木尚により,第1人骨は左上腕骨の破片で身長134.8cmと現代人より背の低い大人の女性,第2人骨は左大腿骨の破片で身長は149.2cmとやはり背の低い大人の男性の骨とそれぞれ推定されました。また,この骨の年代は更新世後期(約10万年前)のものといわれました。鈴木尚は中尊寺の奥州藤原氏のミイラや,徳川家代々の将軍の骨格の調査研究なども行った著名な人類学者です。

2001年,国立科学博物館の特別展で,馬場悠男によってヒトの上腕骨としての基本的特徴が見当たらないので,ヒトではないと見なされました。2022年秋の日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会において,東京大学の諏訪元らから「牛川人骨」はヒグマの骨であるとする見解が示されました。さらに,2023年11月,豊橋市民向け講演会で,これまで約10万年前の成人女性の左上腕骨破片と推定されてきたものは「クマ(おそらくヒグマ)の(とう)骨(前腕の骨)と思われることや,成人男性の大腿骨(だいたいこつ)破片とされてきた1片も,ヒトではなく,クマの骨であろうと指摘されました。約2万年前の化石と考えられています。原標本は東京大学総合研究博物館にあります。常設展示は無くなった?ようです。図2はかつて学会の巡検で見せていただいたときに撮影したものです。出土地付近は史跡公園として整備され,公園内に「牛川原人の碑」があります(図3)。論文の発表はまだの様です。

図2 “牛川人”の原標本 東京大学総合研究博物館 (村松が撮影)

図3 “牛川人”の産出地点の碑(村松が撮影)

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