読んだ小説の舞台に惹かれてイタリアのナポリに近いアマルフィ海岸に出かけたことがあります。海岸近くまで石灰岩(ドロマイト?)の崖が迫り,上からの眺めは素晴らしいところです。上の写真はポジターノの街を見下ろしたものです。ナポリnaporiに行くと定番の観光地にカプリ島の青の洞窟Grotta Azzurraがあります。
青の洞窟といえば青い水の色ですね。なぜ,青いのかを説明したWebサイトはたくさんありますが,やはり?説明します。
私たちの目は「透過」・「反射」・「散乱」してきた光によって色や形を見ています。太陽光の可視光はいわゆる虹の七色ですが,それぞれの色の光は波長の違いによるものです。ここでは,青い光に注目してその性質を見てみます。色の違いは電磁波(光)の振動数の違いです。振動数に応じた刺激を脳が学習して,振動数の違いを色の違いとして認識しているそうです。青い光は赤い光と比べて振動数が多くエネルギーが高いと言えます。そして,波長λ×振動数ν=一定(光速)の関係があり,青い光は波長が短いことになります。また,波長の短い光は吸収されにくく,散乱されやすい性質があります。
コップの水は無色透明ですが,大量の水は青く見えます。その主な原因は水の吸収です。私たちが目にする水の青は,水による吸収,水面の反射,浮遊微粒子の散乱や乱反射が合わさって作り出されています。目に見える光(可視領域)でいえば,青い光は赤い光に対して一桁以上,水に吸収される量は小さいのです(図3)。つまり,赤い光は吸収されやすく,青い光は残りやすいと言えます。また,水深が深くなるにつれて,赤い光ほど吸収されてしまうので,透過光は青くなります。もちろん深くなるにつれて青い光も吸収されてしまいます(図4)。水の色って何色といえばいいのでしょうね?
水による吸収によって青くなった透過光が,反射や水中に浮遊する微粒子(チリや微生物など)によって散乱されたものを私たちは水面上で見ることになります。ただし,この散乱や乱反射によって青い光が眼に届く現象は,あまり深いところで起きても私たちの目には届きません。水による吸収と散乱・乱反射による光の拡散は氷河の中でも起こり,氷河の氷が青く(グレシャブルー:図5)見えます。
さて,青の洞窟(Grotta Azzurra)はカプリ島の北岸で見られます。いろいろな条件が考えられますが,一つは上述したように水中では青い光が残っていることと,この青い光が,反射して戻ってこないと,水面上からは見られません。そのためには海底による反射が効果的で,特に,入ってきた光をすべて反射する白い海底(石灰岩類やサンゴ礁の砂のような白い砂地など)が効果的といわれます。青の洞窟は前述したように白い石灰岩(ドロマイト)からできており,条件的に優れています。白い海底の条件が満たされるところでは,日本を含め世界各地で“青の洞窟”は見られます。
太陽光が洞窟内に差し込むと,吸収されにくい青い光が海底の白い岩石(砂地)で反射されて海面が青くみえる様子は素晴らしく感じます。青くきれいなのは,洞窟の開口部の方(光が入る方向)を見た時です。私が行ったときはすんなり入れましたが(もちろん観光客が多く,入るのに順番待ちは結構ありました)が,見学するには結構条件があるようです。まず,晴天しかだめで,入口(洞の開口部)が狭いため,高潮や波の高いときは入れません。太陽高度の関係かと思いますが,冬より夏,午後より午前(早朝)が良いそうです。
文献 図1 M. Pennetta,2018,Beach Erosion in the Gulf of Castellammare di Stabia in Response to
the Trapping of Longshore Drifting Sediments of the Gulf of Napoli (Southern Italy).
Geosciences 2018, 8, 235; doi:10.3390/geosciences8070235
図3・図4 URL:http://www.techno-synergy.co.jp/nkd_appli/ex-DF450.html
[水の透過率スペクトル測定];2023 年 5 月4 日閲覧
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